狂気洞窟の魔法使い
True


日の光も届かない深淵のような洞窟の奥深く。
今――わたしは死にかけていた。

我が名はアッシュ・ズリマワール。
人はわたしを、「狂気の錬金術師」と呼ぶ。

わたしは、魔法生物を愛していた。
くだらない俗世間から離れたこの洞窟に研究所を作り、ゴーレムやホムンクルスなど、様々な「作品」を生み出してきたものだ。
わたしの研究を奪おうと不逞の輩が何度か侵入を試みたこともあるが、魔法生物たちがことごとく返り討ちにしてやった。

何者も、我が研究を阻むことなどできない。
わたしは新たな生物を誕生させる「神」に等しき存在。
そんな驕りが――些細なミスを誘発したのかもしれない。

ある時、わたしは新種のスライムを生成しようとしていた。
魔法生物の元となる素材が入った瓶を手に持ち、研究室への階段を下りていたわたしは、うっかり足を滑らせてしまったのだ。
元々、運動神経はいい方ではない。
そのままわたしは派手に転倒し、持っていた瓶の中身を自分にぶちまけてしまった。
全身を毒々しい粘液に覆われ、信じられない激痛が襲いかかってきた。

あまりの痛みに気を失い、次に気付いた時――
わたしは、スライムになっていたのだ!

この時の驚きが、想像できるだろうか?
いくら魔法生物を愛していたとは言え、自らがスライムになってしまうとは!

発声器官もなく、ワンドを握ることもできないこの姿では、まともに魔法を使うことさえ不可能だ。
例え元に戻る方法を編み出したとしても、人間の姿を取り戻すことは絶望的だった。

わたしは、スライムとして生きていくしかなかったのだ。

――主を失ったことで、魔法生物たちはやがて暴走を始めた。
一部は洞窟を抜け出し、近隣の人里にまで下りて大騒ぎになったらしい。
噂を聞きつけた「冒険者」と自称するコソ泥たちが我が物顔でわたしの研究所に乗り込んできて、愛する子供たちをことごとく破壊していった。

彼らの横暴を止めたかったが――スライムとなった身にそんな力はない。
それどころか同じ魔法生物だと思われ、退治されてしまうかもしれない。
わたしにできるのは無様に洞窟の天井にじっと身を隠すことだけだった。

全ての作品を壊され、全ての魔法書を盗まれ、以来――廃墟と化したこの洞窟は、静寂に包まれてきたのだ。
あれから、どれほどの年月が経ったのだろう?

スライムは不死身ではない。
養分を得るには体内に獲物を取り込まなければならないのだが、もはやここにロクな生物はいなかった。
幸い、湿気の多い洞窟内は水気が無くなることはないので、干からびる心配はないのだが――
今ではわたしは粘液である体のほとんどを失い、洞窟の天井にたまった水滴の一部と化していた。

このままゆっくりと消滅するしか道はないのか?
まともな思考力は失われ、意識もほとんど途切れかけていた。

そんな時――
奇跡が起こった。


空気が、揺れた。
微かに聞こえてくる物音。
闇の中に生まれた気配。

誰かが、それも外界から、この洞窟内に入り込んできたのだ・・・!
わたしは消えゆく意識を繋ぎ止め、慌てて入り口を注視した。

やがて――地上から続く長い階段の上から、何人かの人影が現れた。


「うわぁ・・・本当に魔法使いの住家みたいだな」

「だから言ったじゃない。ギルドに残っていた文献だと、そこそこ有名だったみたいよ、ここの持ち主」

「あちこちに魔物のものらしき残骸があるわね・・・かつてここを訪れた冒険者たちの仕業かしら?」

姿を見せたのは、三人の女性だった。

一番前を歩くのは、金色の髪を腰まで伸ばし、鍛え上げた豊満な体にボディラインを強調するような薄手の鎧をまとった戦士ファイター
鋭い目つきで辺りを観察する美しい顔つきは、相当の腕前であることを伺わせる。

その後ろにいるのは、栗毛色の髪を肩の辺りでキッチリと切り揃え、わたしにとっては懐かしい黒いローブを着た魔術師メイジ
天井に向かって掲げたワンドの先に魔法で生み出した光を灯し、猫っぽい表情でわたしの研究所に好奇心に満ちた目を向けている。

一番後ろを歩くのは、闇の中でも生える長い黒髪の、白い法衣を身に付けた神官クレリック
慈愛に満ちた優しそうな面差しだが、物陰から何が現れても対処できるように、意識を集中しているのがよく分かった。

間違いない、この者たちは冒険者だ。
この手の連中には、散々研究所内を荒らされてきたものだ。
もはや宝と呼べるようなものは何も残ってはおらず、今更足を踏み入れる物好きなどいないと思っていたのだが――

「この様子だと、酒場の連中が言ってた話も本物っぽいよなあ?」

「地元の人たちは噂を信じて近寄りもしないらしいし・・・それだけ危険な場所だと思われているんでしょう」

「見てなさいよ・・・!そんな難易度の高い迷宮を私たち3人で踏破して、女だけのパーティだって馬鹿にしていたあいつらの鼻を明かしてやるんだから!」

賑やかに喋りながら、女たちはわたしが潜む天井の側へと近づいてくる。
ナルホド・・・腕試しに来た連中か。
すでにあれから時が流れ、この洞窟の実状を知る人間もいなくなったようだ。
魔法生物はひとつ残らず破壊され、あるのは瓦礫と残骸だけだと言うのに、とんだ無駄足を踏みに来たと言うわけだ。

しかし――わたしにとっては、これは最後のチャンスだった。
彼女たちを利用して、何としても生き延びる道を探し出さなければ!
スライムと化したわたしは、まさに魔物のように獲物たちの動向を伺った。

「よし、じゃあとりあえず私たちで辺りを調査してくるから、アリアは結界を張っておいてちょうだい」

「分かったわ」

異形のものに見張られていることも知らず、女たちは折れた巨大な柱の根元に荷物を置くと、女戦士と女魔術師の二人が武器を手に取り、洞窟の奥へと踏み込んでいった。
残った神官――アリアと呼ばれた女性が、両手を組んだまま小声で神に祈りを捧げている。
拠点となる結界を張っているのだろう。
神の加護を受けた結界の内部は生命力や精神力を回復させる効果がある為、冒険者たちは探索に疲れた体をこの中で癒すと言う。

わたしは残った力を振り絞って天井を這いずり、彼女の元へと近づいていった。
この小さな体では、まるで無限回廊をさ迷うような労力を伴う道のりだ。

結界は体力を回復させるだけなく、魔物たちの侵入を防ぐもの。
本来ならば近づこうとしたところで、結界内に侵入することは不可能だ。
しかし今のわたしは消滅する寸前の、ほとんど水滴と変わらない存在。
この姿ならば神の力にも感知されずに通り抜けられるはずだ。

もっとも、中に忍び込んだところで、そこからが問題だった。
――本来、スライムは獲物を粘液に包まれた体内に取り込み、ゆっくりと消化しながら自分の養分へと変換する。
同等の存在となったわたしも、栄養を吸収するためにはそのやり方で獲物を捕食しなければならないのだが、ここまで体積を失ってしまっては彼女に襲いかかったところで難しいだろう。

だが、幸いなことにわたしが浴びた魔法薬は、「変種のスライム」を創り出すものだった。
通常の個体とは異なる能力を、わたしは新たに生みだすはずだった魔法生物に与えていたのだ。

それは――「寄生能力」。
この変種のスライムは、他の生物の体内に潜り込み、脳を乗っ取って自分の支配下に置くことができるのだ。
当然、魔法生物は創造主であるわたしの命令に従うため、寄生されたものは例外なくこのアッシュ・ズリマワールの配下となる。
わざわざコストのかかるゴーレムを作らずとも、寄生スライムを生み出すだけで、意のままに動かす奴隷を無尽蔵に増やすことも容易と言うわけだ。

魔法薬を生成した当初は実験のため、近くの村の人間をさらってスライムを取り憑かせ、わたしの身の回りの世話でもさせるつもりだったのだが――
今やスライム化した自分自身が、その力を宿しているのだ。
この状況において延命を図るには、他者の肉体を乗っ取るのが最も確実な方法である。
何としても消滅してしまう前に、あの冒険者たちの体内に寄生しなければ!

長い長い距離を這い続け、ようやく女の頭上に到着した。
真下を見ると、アリアは結界の中に座り込み、荷物の点検をしているようだ。

よし・・・そのまま動くなよ・・・?
タイミングを見計らい、わたしは天井に張り付けていた体をゆっくりと引き剥がした。
奈落の底に落ちていくような恐ろしい浮遊感。
文字通り一滴の雨水となって、地面目掛けて落下していく。

狙いは誤らず!
ピチャッと音を立てて、アリアの頬に接触する。

「きゃっ」

可愛らしい声を上げ、女神官は眉を顰めて天井を見上げた。
わたしは彼女の顔にへばりついたまま、その様子を伺う。

「もう・・・だからこういうじめじめしたところは嫌いなのよ・・・!」

粘液に包まれた体が震えるほどの大音量で聞こえてくるアリアの声。
今のわたしからすれば、彼女は巨人族に等しき存在だった。
と、空気を揺るがせながら、大きな手が顔に近付いてきた。

まずい!
わたしを拭う気なのだ!

慌てて頬を流れ落ち、顎下に隠れる。
手っ取り早く耳や口から体内に潜り込めればいいのだが、その前に拭き取られてしまっては元も子もない。
剥き出しの顔にいつまでも張り付いているのは危険だ。
まずは服の中へと潜り込もう。

わたしは顎を這いずり、首から法衣の襟元を目指した。
その進路に、いくつもの水の塊が浮き上がっている。

しめた、汗だ!
わたしは歩を速め、塊の中に身を突っ込んだ。
塩分を含んだ汗とスライムである体が同化し、体積が倍に膨れ上がる。

いいぞ・・・しばらくはこうして失った体を取り戻していくとしよう!
わたしは汗の流れに沿って首を伝いながら、法衣の中に忍び込むことに成功した。

途端に、むわっとした湿気が視界を歪める。
湿度の高い洞窟内にいる上に、彼女たち冒険者は重装備に身を固めていた。
普通の人々に比べて、体温は相当高まっているようだ。

本人は不快だろうが・・・
スライムであるわたしにとっては、まさに天国!
法衣の中を這い回り、蒸れて浮き上がった汗の玉を次々と吸収していく。
気付けばわたしの姿は、アリアの胸を覆い尽くさんばかりになっていた。

「やだ・・・なんか、すごく汗かいてきちゃった・・・」

当の彼女は体を取り戻していくわたしの存在を、自分の発汗と勘違いしている。
法衣の襟元を引っ張り、風通しを良くしようと仰ぎだした。

フフフ、自らわたしを回復させてくれているとも知らずに・・・
肌の表面に浮き出る水分全てを吸収するべく、わたしはアリアの胴体にじゅるじゅると纏わりついた。

「あ・・・っ!?」

たまらず彼女は喘ぎ声を上げ、身を捩らせた。
胸を押さえつけるわたしの動きを、愛撫のように感じているのか?
面白いので、乳房の形に沿って粘液をくっつけてみる。

「はぁんっ!」

ビクン、とアリアの体が震えた。
そんなにも気持ちいいのだろうか?
と言うか・・・女の肌は、これほどまでにすべすべとしたものだったのか・・・?
液状の手にさえ伝わってくる、きめ細やかな感触。
今まで魔法生物にしか愛情を注いでこなかったわたしにとって、女性の肉体は触れるだけで新鮮な感動を覚えた。

白い乳房。
その先端にある桃色の乳首。
汗に濡れる柔肌に張り付いてるだけで、奇妙な興奮が高まってきた。

よし・・・どうせならこのまま女の肉体を探索する目的も含めて、アリアの股間から体内へと潜り込ませてもらおう。
わたしはズルズルと胸から腹を伝って、下腹部を目指した。
下履きが紐で締めつけられていたが、形を持たないスライムにとっては障害物にすらならない。
どろどろと布地に浸りながら、あっという間に股間へとたどり着いた。

「やぁ・・・っ!ど、どうなってるの・・・?はう・・・っ!」

熱い吐息を漏らし、身悶えるアリア。
彼女が発する汗と言う汗を奪いつくし、わたしの姿は彼女の胸から腰に掛けて、肌の表面をほぼ覆い尽くしていた。

一端動きを止めて襟元から体の一部を伸ばし、女神官の様子を確認してみる。
アリアは虚ろな目で、虚空を見上げたままピクピクと痙攣していた。
得体の知れない快感に翻弄され、呆然自失の状態になっているようだ。

女と言うものはこうした刺激に弱いのか?
とにかく、この状態なら放っておいても暴れられる心配はないだろう。
今の内に急いで寄生させてもらうとしよう。

わたしは下腹部への進行を再開した。
恥毛をかき分け、股間を突き進む。
女の割れ目は、汗に蒸れた体以上に湿りきっていた。
性的興奮に反応して、分泌液が生みだされているようだ。

フフフ、まるで彼女の方からスライムを誘いこんでいるようではないか。
わたしは嬉々として濡れそぼる股の間に身を浸していった。

「あぁっ!?」

途端にアリアの嬌声が一際大きくなる。
ズブズブと秘所に潜り込んでいく度に、彼女の腰が狂ったように暴れ回った。

わたしの動きを本能的に察知し、止めさせようとしているのか、法衣の上から股間を手で押さえつけてくる。
しかし当然、そんなことでスライムの侵入を防げるはずはなかった。

秘所から溢れる分泌液と混ざり、粘液は更なる膨張を繰り返す。
割れ目から内奥へと這いずり、逆流する液体となって彼女の体の中を駆け巡っていく。

「ぁ・・・ぁ・・・ぁ、ぁぁ・・・!」

腕から力が抜けたのか、股間を覆う圧迫感が消えた。
もはやまともに抵抗する意思さえなくなってしまったようだ。
わたしは彼女のあらゆる体液と融合し、ゆっくりと内部を満たしていった。

何と言う心地良さ!
スライムとしての本能なのか?
獲物の中に潜むことに、言いようのない感動を覚える。

膣内が、尿道が、全身に張り巡らされた血管までもが、アリアの体の器官と言う器官が、液体となったわたしで一杯となった。
このままではパンパンに膨れ上がって破裂してしまいそうだ。

「ゴッ・・・ゴボォッ」

おっと、体の中にとどまりきれず、わたしの一部がアリアの顔から、涙や鼻水や涎となって溢れ出してきてしまった。
いつまでも苦しめるのは本意ではない・・・すぐに意識を乗っ取ってやろう。

スライムの手を伸ばし、彼女の脳を包み込む。
意思を宿した液体が、その中にじわじわと染み込んでいった。
それとともに、ゆっくりと痙攣が治まっていく。

これで、この女の体はわたしの意志で自由に動かせるようになったはずだ。
よし、試しに何かしゃべらせてみるか?

「ぁ・・・ごぶっ、あ"、あ"ぁ、あ"ぁぁー・・・!」

咳き込み、口内にたまった液体を吐き出しながら、アリアがくぐもった声を上げた。
そうだな・・・まずは自己紹介でもしてもらおう。

「わ"・・・わ"だ、じ・・・わたし・・・私、の名前、は・・・ア、アリ、アリア・・・」

女は言葉を覚えたての赤子のように、自分の名前を声に出してつぶやいた。
いいぞ、いいぞ・・・
ならばついでに、仲間たちの名も教えてもらおうか。

「戦士の方は、ノエル・・・魔法使いは、ミュゼット・・・」

アリアは言い淀むこともなく、スラスラと仲間の情報を教えてくれた。
どうやら完全にわたしの命令に従ってくれているようだ。
素晴らしい・・・実に素晴らしい!

このままなら只の操り人形だが・・・
さらに同化を強めれば、彼女の肉体そのものがわたしのものとなるのだ!
アリアの脳にとめどなくスライムの粘液を流し込み、意識を集中させる。

その瞬間、わたしを新たなる衝撃が襲った。
天井から身を投げ出した時の浮遊感とも違う。
全ての感覚が拡散し、まるで周囲の空間全てが自分の一部となったかのような錯覚に陥る。

急激に甦る五感。
思考が混乱し、目を何度も瞬かせる。

・・・?
『目』を『瞬かせて』いる!?

「・・・はっ!?」

声を上げようとすると、確かに『口』から『声』が出た。
『鼻』から伝わってくる『匂い』。
『両脚』で地面に『立って』いる感覚・・・!

「お・・・おお・・・!」

両手で顔を触り、感触を確かめる。
柔らかい。
柔らかい!
これこそまさに、『肉体』の感触!
口から漏れたのは、明らかに女の声。

「ぐ・・・げぇぇっ」

喉の奥にたまった粘液を吐き出す。
吐き出された液体が地面に広がり、水溜りのようになった。
近付くと、水面が鏡のようにわたしの姿を映しだす。

それは――確かに、神官クレリックアリアの顔だった。

「やった・・・!本当に、肉体を乗っ取ったのだな・・・!」

水面に映るアリアが薄ら笑いを浮かべ、わたしが思った通りの言葉を口にした。
柔らかい頬を手で撫で回す。
綺麗な黒髪が指に絡み付いてきた。
鼻に近づけると、その髪からいい匂いが漂ってくる。

「ふうう・・・!素晴らしい・・・液体ではない、これこそまさに肉の体だ・・・!」

両手で、手に入れたアリアの体を抱き締める。
二の腕の弾力が気持ちいい。
本来のわたしの腕は枯れ枝のように細かった。
まさにこれは、女性そのものの腕だ。

何よりも、こうして手や足を動かせるだけで嬉しさが込み上げてくる。
不定形のスライムではない――人間の体。
二度と手に入れることができないと思っていた姿を、わたしは取り戻したのだ!

目を瞑り念じてみると、アリアの記憶や知識を自分の物のように確かめることができた。
寄生スライムは獲物の意識を支配できる。
その能力を応用すれば、こうして脳の情報を閲覧することも思いのままと言うわけか。

試しに、意識を乗っ取られる直前の彼女の思考を盗み見てみた。
ほほう・・・どうやら相当の快感に苛まれていたようだ。
なるほど、寄生スライムの粘液には相当な催淫作用があったらしい。
獲物となった相手は、スライムに張り付かれた途端に沸きあがる気持ちよさに意識を囚われ、動きを封じられると言うわけだ。
フフフ、様々な苦痛に耐えてきた歴戦の冒険者様も、性的な快感に対しては町娘と変わらなかったらしい。

それにしても・・・

「はあ・・・何と言う美しさなのだ・・・」

水面に映るアリアの顔に、いつまでも見蕩れてしまう。
人間だったころにもこんな美女に出逢ったことはなかった。
しかもそれが自分自身なのだ・・・

つぶらな瞳を動かそうとすれば、眼球が思い通りに動いてくれる。
口の中で舌を伸ばすと、唇や歯の裏を舐め上げてくれる。
手の動きも、脚の動きも思いのまま。
本当に――アリアの肉体が我、アッシュ・ズリマワールの肉体となっているのだな・・・!

よく見れば、法衣のあちこちに粘液が飛び散って酷い有様だった。
無垢で可憐な身体を随分と汚してしまった。
もはやこれはわたしの物なのだ・・・
丁寧に扱ってやらねばな・・・

「んふ・・・っ」

吐息を漏らしながら、胸元の汚れを指で拭き取ってやる。
同時に、胸の膨らみに手を押し込んでみた。

「あ・・・っ」

何と言う柔らかさ!
スライムの手でも撫でてやったが、やはり人間の手で直接触ると感覚が段違いだ。
布地越しにも、女の乳房の弾力を確かに感じる。

思えば女性には縁のない人生だった・・・
知的欲求のすべてを魔法生物に向けていたが、よもや女性の肉体がこれほどの神秘性を秘めていたとは。
両手の指を自在に使って、胸を一心不乱に揉み続ける。

まどろっこしくなってきたので、襟元から直接手を突っ込んで乳房を鷲掴みにした。
直に触ると、益々乳の肉の柔軟さに驚く。
手を動かす度に、形も自在に変化した。

「フフフ・・・これはこれで、まるでスライムのようではないか・・・?」

ほくそ笑みながら、服の中から片方の指を食いこませ、もう片方の手で服の上から膨らみを掬い上げる。
沸き上がる気持ちよさに、頬が上気してきた。
口から吐き出される息に艶めかしい熱がこもる。

信じられない・・・
女の体と言うのは、どこまで気持ちいいのか・・・!

無意識の内に片手が下半身に伸び、股間の割れ目を上下に撫でた。
先程はここから入り込み、アリアの体を乗っ取ったのだ・・・
いわば自分にとっては、始まりの場所。

「ん、んふ・・・っ!」

擦るだけで、痺れる感覚が走り抜けた。
立っていられず、その場にへたり込んでしまう。
しかし指は別の生き物のように、夢中で秘所を攻め続ける。

「あっ!あ、あ、はぁぁ・・・!」

地面に寝転がったまま、腰だけを高く持ち上げ、股の間を乱暴に撫で摩る。
体内に潜むスライムの体まで、興奮で沸騰してきたみたいだ。
脳を覆う粘液がグツグツのスープのように茹っている。

視界が霞んできた。
意識が薄れてきた。
只指を動かす事だけに集中していると――突然、鋭い衝撃が股間から全身を貫いたのだ!

「はぁあああああ!?」

ビクン、ビクン、と腰が跳ね、やがて力が抜けていく。
驚きで口からゴボゴボと粘液が溢れ出ててしまった。

な、何と言う衝撃なのだ・・・!
どうやら、アリアの肉体は性的絶頂に達したらしい。
人だったころに行った自慰を思い出しても、比べ物にならない破壊力だ。

「い、一体どうなっているのだ・・・?この女が特別なのか・・・それとも・・・」

緩やかな高揚感に包まれたまま仰向けに寝転がり、深く深呼吸する。
男ならばフィニッシュを迎えればそれまでだったが――この体はいまだに股間から快感が、さざ波のように伝わってきていた。
実にいい気分だ・・・
人の姿を取り戻した上に、このような素晴らしい体験ができるとは。
わたしはすっかり、女の肉体の虜となっていた。

これまで生みだしてきたどの魔法生物とも違う美しさ。
そんな生き物を自分の自由にできるのだから、研究者としてこれほど嬉しいことはない。
しかもアリアの肉体の中に潜んでいると、知的好奇心だけでなく彼女を征服したと言う欲望まで鎌首をもたげてきた。
わたしは、異常なまでの支配欲に目覚めようとしていたのだ。

股間から漂ってくる「雌の匂い」が鼻孔をくすぐり、再び興奮の熱が高まってくる。
意識しなくても、勝手に腰が蠕虫ワームのようにくねりだす。

――その時、人が近づいてくる気配を察知した。
アリアの仲間たちが戻ってきたのか?

先程見た二人の女の顔を思い浮かべると、次第に頬が綻んできた。

「ふふふ・・・!そうか・・・彼女たちはこの女の仲間・・・ならば、わたしの『仲間』でもあるのだな・・・!」

ニヤリと笑いながら、魔獣ガルムのように舌なめずりをする。
口の端から垂れた粘液を舐め取り、わたしはゆっくりと身を起こした。
そのまま待ち構えていると――暗がりから女たちが姿を見せた。

「戻ったよ、アリア。と言っても首尾はあまり芳しくないけどね」

「いくつか部屋があったから覗いてみたけど、どこもかしこも物色された後・・・あるのは役に立たないガラクタばかりよ」

ノエルと言う名の戦士が、肩を竦めながら嘆息した。
魔術師のミュゼットも不満そうに眉を顰め、無駄骨だったとばかりにワンドで自分の肩を叩いている。

彼女たちは知らないのだ――仲間であるアリアが、「まったく違うモノ」に変わり果ててしまったことに。

「おい、アリア・・・どうしたんだよ、その格好は!?」

当てが外れてすっかり緊張を解いていたノエルが、粘液に覆われたこちらの姿に気付いて驚いた声を上げた。
早速わたしはこの女のフリをして、一芝居打つことにした。

「ああ、2人とも!よかった・・・結界を張ろうとしていたら、天井からスライムに襲われて大変だったのよ・・・!群れじゃなかったから、どうにか退治できたけど」

アリアになりきり、悲壮な表情を浮かべて力尽きたようにまた地面に座り込む。
仲間である彼女たちにもバレないほどの演技力だろう。
本人の記憶を利用している上に――「スライムに襲われた」のは事実だからな・・・フフフ。

「本当か!?怪我なんてしてないだろうね・・・」

案の定、ノエルは話をすっかり信じ込み、慌てた様子で駆け寄ってきた。
近付いてくる女戦士の豊満な肢体を眺め、わたしの中で獰猛な欲望が漲る。

このまま宿主の記憶と知識を利用すれば、本人になりすましたまま地上に逃げ出すことも可能だろう。
だが、いつまでも他人のフリを続けるなど、まっぴらごめんだ。

肉体を取り戻したからには、頓挫していた魔導研究を再開することこそ責務!
しかし、それには手駒が必要だった。
いずれ魔法生物を創り直すとしても、当座は彼女たちのような人間を小間使いとして手元に置くのが手っ取り早い。

本来のわたしならば、ならず者の一人や二人を相手にすることなど造作もないが――
神官であるこの娘の身体で、どこまで魔法が使いこなせるのかは疑問だった。
正面から襲っても、二対一ではまだこちらが不利。
ならば仲間だと欺いて油断させるしかない。

さあ、もっと寄って来い・・・!
すぐにお前たちを美しき下僕へと変えてやろう。

魔法で意識を支配することは可能だが、寄生スライムを相手に埋め込むことでも同様の効果がある。
幸い、スライムとなったわたしは体の一部を切り離して『分裂』『増殖』することが可能だった。
分裂したスライムを彼女たちに寄生させれば、たちまち我が傀儡となってくれるだろう。

アリアの体の中はスライムの粘液で充満している。
つまり――この体は寄生スライムを無尽蔵に増やす精製所でもあったのだ。

介抱しようと駆け寄ってきたノエルを見つめたまま、密かに魔力を集中させる。
腹の中で魔に満ちた液体が蠕動し、ゴボッと音を立てて新たなスライムが分裂、誕生した。
その影響で、法衣に包まれた腹が見る見る膨れ上がる。

「待って、ノエル!離れなさい!!」

「え・・・?」

仲間を心配する女戦士はわたしの変化に気付いていなかったが、女魔術師が目敏く不穏な気配と違和感を察知したらしい。
呼び止められ、ノエルがミュゼットの方を振り返った。

だが、もう遅い!
わたしは立ち上がり、背後から彼女に抱き付いた。

「ア、アリア・・・?」

「んふふ、じっとしていてね〜ノエル・・・」

状況をつかめない様子のノエルの耳元に顔を近づけ、息を吹きかけるように囁く。
そのまま腹に力を込め、創り出したばかりのスライムを口から吐き出した。

「グ・・・ゲェェェ」

「ひぃぃぃっ!?」

這い出てきたスライムは、すぐさま本能的な動きでノエルの耳の中へと潜り込んでいった。
女戦士はビクンと身を強張らせ、なす術もなく地面に倒れ込んでしまう。

「ノエル!」

駆け寄ってこようとするミュゼットの前に立ち塞がり、邪魔されないように威嚇しながら、わたしは獲物の様子を見下ろした。
ノエルはどこか遠くを見つめた蒼白な顔で、痙攣を続けている。
口からは「ぁ・・・!ぎ・・・!」と嗚咽が漏れていた。

屈強な戦士も、油断してしまえばこの通りだ。
ククク、すぐに脳をスライムが浸してくれるだろう。

「彼女に何をしたの!?」

涼しい顔で仲間が苦しむ姿を眺めるわたしに向かって、ミュゼットが杖を振り上げながら叫んだ。
猫に似た大きな目を吊り上げ、明らかに猜疑心を剥き出しにしている。

「私の眷属にしてあげたのよ・・・安心して、次はあなたの番だから」

「お前・・・アリアじゃないわね!魔物の擬態!?」

「ええ〜、酷いなぁミュゼットったら・・・私の顔を忘れちゃったの〜?」

わたしは頬を両手で引っ張りながら、嬉々としておどけて見せた。
よく知る仲間からすればとても本人とは思えない姿だろうが、この肉体が幻影の類でないことも見ればわかるだろう。

「意識を乗っ取られているの・・・?まさか、悪霊ワイトの仕業・・・!?」

ミュゼットは目まぐるしく観察を続けながら、ブツブツと推論を呟いている。
実に魔術師らしい光景だ。
わたしは妙な懐かしさを覚えた。

「さあ〜、どうする?私の正体が何であれ、あなたに仲間を攻撃することが出来るのかしら・・・?」

「馬鹿にしないで!私たちは冒険者よ・・・魔物に体を乗っ取られるくらいなら、アリアは喜んで死を選ぶに決まっている!お前を引き剥がしてから、寺院で生き返らせてやるわよ!」

わたしの挑発に激高し、ミュゼットは詠唱ルーンを唱えて杖に魔力を宿す。
火球の魔法を使うつもりなのだろう。
フフフ、覚悟は結構だが・・・こちらにばかり意識を向けているところがまだ甘い。

「――やつの動きを封じろ」

攻撃魔法を前にして身構えもせずに、わたしは『力ある言葉』を口にした。
その途端、倒れていたノエルが見えない糸に引っ張られるようにムクッと起き上がったのだ。

「!?」

驚くミュゼットの隙を突き、ノエルは素早い動きで彼女を押し倒し、手から杖を取り上げた。
そんな早業をやってのけながら、彼女の顔は一切の感情を失くしてしまったように無表情で、目も虚ろだった。

「ノエル!一体どうしたの!?」

組み伏せられたミュゼットはワケも分からずに仲間であるはずの女戦士を非難する。
アリアだけでなく、ノエルまでもがおかしな行動を取り出したのだから、彼女からすれば信じられない状況だろう。

「うふふ・・・言ったでしょう、この子はもう私の下僕なの・・・そうよね?」

「はい――御主人様マスター

わたしの問いに、ノエルは抑揚のない声で答える。
いいぞ、分裂したスライムにもしっかり知性はあるようだ。
こうしていると、本当にこの女戦士が我が研究所に忍び込んだ侵入者を捕えた門番にでもなったようだ。
わたしはノエルに近付き、遠慮なくその肉体を観察した。

耳の穴からスライムの残滓がポタポタと流れ落ちている。
先程の痙攣の影響か、口からも涎が垂れているが、ノエルは一顧だにしていない。

わたしは彼女の金色の髪に顔を埋め、プロポーション抜群の肉体を思う存分撫で回してやった。
それでもノエルは無反応だ。

戦乙女のごとき美女を好きに出来る興奮に、アリアの股間がいつの間にか濡れだしていた。
わたしの影響で、敬虔な神の御使いもすっかり堕落してしまったらしい。

「ノエル!しっかりして!目を覚ましてちょうだい!」

そんなわたしたちの痴態を見上げ、ミュゼットは必死に仲間の意識を取り戻そうとしていた。
無駄なことを・・・
女戦士の意識は完全にスライムに食い尽くされていると言うのに。

「あらあら、人の心配をしている場合・・・?次はあなたがこうなる番なのよ」

それは人から見れば恐ろしい妖女の笑みに思えただろう。
フフフ、わたしもすっかり女のフリをすることに慣れてきたものだ。

ノエルの身体への凌辱を止めて、ミュゼットの側に屈み込む。
彼女は魔物に向けるような敵意に満ちた眼差しを、こちらに向けてきていた。

「何か言い残すことはあるかしら?」

「ひょっとして・・・お前は、この洞窟に住んでいた魔法使いなの・・・?」

「ほう、どうしてそう思うんだ」

その指摘に、わたしは本性を露わにした。
ミュゼットは魔導に携わる者特有の全てを識ろうとする目で、アリアの中に潜むわたしの正体を探ろうとしている。

「・・・20年前、この洞窟には錬金術に取り憑かれた魔法使いがいて、様々な魔法生物を創り出していたと伝えられていたわ・・・先程からの、ノエルがまるで自分の所有物となったかのような傲慢な物言い、いかにも造物主を気取った錬金術師アルケミストらしい考え方だわ・・・周りにあった魔物の残骸だって、かつてお前が創りだしたものなんでしょう!?」

「フン・・・中々鋭いじゃないか」

こんな状況下で冷静に相手の情報を分析できるこの女魔術師の聡明さに、わたしは素直に感心した。
――同時に、すでに二十年もの月日が経っていたことにも驚きを覚える。

「まさか死してなお、死霊としてこの洞窟に住みついていたなんて・・・何ておぞましいの!はやくアリアの体から出ていきなさい!」

しかしさすがにわたしの正体までは見破れなかったらしい。
霊体化してこの娘の肉体に乗り移っていると思っているようだ。

勝気なミュゼットの顔をじっと眺めていると、何故か奇妙な懐かさが込み上げてきた。
その記憶の正体を探ろうとして――思い出す。

そうだ。
彼女の顔が、まだわたしが魔術アカデミーにいたころに主席だった女性魔導師の面影によく似ていたのだ。
あの女性魔導師は本当に素晴らしい才能の持ち主だった。
アリアの体に入るまで女性への興味が薄かったわたしですら、おぼろげに記憶に残っていたほどに。

そして彼女の怒りに満ちた吊り上った眼が、わたしの中の黒い感情を刺激してきた。
かつてわたしが編み出した魔法理論を非難し、「倫理に反する」「非人道的だ」と罵り、結果わたしを人里から離れさせる原因となった連中――
魔術師ギルドにふんぞり返っていたあの連中が向けてきた眼差しと、それは同質のものだったのだ。

羨望と憎悪の入り混じった複雑な感情で、ミュゼットの姿を穴が開くほどに睨め回す。
そうしている内に、わたしの中に根を張った支配欲が素晴らしい閃きを囁いてきた。

「・・・分かったわ・・・この体からは出ていってあげる・・・」

にんまりと微笑むわたしの言葉が予想外だったのか、ミュゼットが驚きに目を見張る。
その顔がどう変貌するのかを想像しながら、わたしは彼女の頭に腕を回して栗色の髪の毛を指で弄んだ。

「代わりに――今度は、あなたの体にお邪魔するわ」

「え――!?」

予想通り、ミュゼットの表情が恐怖に歪んだ。
そうなのだ。
この娘ならば、魔術の素養は十分にある。
神官であるアリアの中に潜むより、魔術師の器に移動した方がわたしは本来の力を発揮できるはず。
ならばこの女を人形に変えるより、わたしの入れ物として扱う方が適任だろう。

「感謝しなさい・・・アッシュ・ズリマワールをその身に宿せる栄光を独り占めにできるのだから」

「イ、イヤ!やめて!来ないで!!」

ミュゼットはすっかり恐慌をきたし、ノエルに体を押さえつけられたまま暴れ出した。
まるで大型動物を前にして怯えきった猫のようだ。
それまでの強気な態度が嘘だったとしか思えないか弱い姿が、わたしの中の捕食者としての興奮を刺激してきた。

さあ、すぐに体を乗っ取ってやろう・・・!
先程のノエルの場合と違い、今度はわたし自身が移動するのだ。
このまま体内から抜け出してしまうとアリアの肉体が抜け殻になってしまうので、腹の中に新たに生みだした寄生スライムを残しておく。
こうすればわたしが離れた後も、すぐに脳に移動して意識を支配し直してくれるだろう。

「暴れないで、じっとしていなさい・・・」

「ぐ、うう・・・っ!」

下僕となったノエルがミュゼットの頭をつかみ、上を向かせる。
わたしも両手で彼女の顔を固定し、強引に口を開けさせた。
全身に充満させていた粘液を動かし、アリアの肉体からゆっくりと這い出ていく。

「ゲッ・・・ゴボォォ」

「いやああああ!!」

喉を通り、口から外界へと顔を覗かせる。
わたしの姿を見た途端、ミュゼットの表情が更に蒼白さを増した。
仲間の口から怪物が現れようとしているのだ、おぞましい光景をこの距離で見せつけられて、恐ろしさも相当だろう。
スライムの一部を手の形に変えて、ミュゼットの頬に張り付く。

「うぅ・・・んんんっ!」

彼女は歯を食いしばってわたしの侵入に抵抗しようとしている。
無駄、無駄・・・
気にせず、粘液状の体を女の顔に流し込む。
閉じた歯の間から、液体が体内へと浸透していく。

「ぐう・・・!う、う、うごぼぉっ!?」

その圧力に耐え切れず、ミュゼットがとうとう口を開いてしまった。
途端に、顔を覆っていた粘液が一気に彼女の中へと流れ込む。
その勢いは口だけでは受け止めきれず、目や鼻、耳を伝って体内に侵入する。

「ガボボッ、ゴッ、グゲェ」

アリアとノエルに拘束されたまま、ミュゼットの体がガクガクと激しく痙攣を起こした。
強引な浸食のせいで吐き気を覚えたらしく、吐瀉物が逆流して口から噴き出てきたが、気にせず粘液を流し込み続ける。
ゆっくりと乗っ取ったアリアに対して、今度は一気に宿主の体内に『意思ある液体』を張り巡らせていく。
ミュゼットの内側はピンク色の肉が健康そうに広がっていて、スライムの本能が歓喜に打ち震えていた。

「ぉ・・・!ぉ・・・!お、ごぉ・・・お"お"お"っ!」

脳に食らいつき、溶け込み、一体となる。
嗚咽と同時に彼女の意識が先細り、消えていくのが分かった。
スライムが生み出す催淫効果によって、抵抗しようとしていた意思が削ぎ落ち、徐々にミュゼットの肉体がわたしの支配下になる。
神経がつながったことを確かめるために四肢に力を込めると、間違いなくわたしの思った通りに手足が動いてくれた。

目の端に粘液の残滓が滲んでいるのを指で拭き取り、体をゆっくりと引き起こす。
主人が肉体を移動したのを察知し、ノエルが拘束を解いた。
対照にアリアは意識を失い、魔力の切れたゴーレムのように動かなくなる。

「グエェ・・・オゲッ」

立ち上がったわたしは口内に残った粘液のカスを吐き出し、自分の物となった新たな肉体を確かめた。
意識を集中して身に宿る魔力を探ってみる。

「ほう・・・?これは・・・!」

沸き上がる波動を感じ取り、自然と頬が緩んだ。
思った通りだ、この女――実にすばらしい!
複雑な心境だが、ミュゼットの魔術師としての資質はわたし以上だった。
じっとしていても魔力が漲ってくる。
まるで自分が伝説の魔女にでもなったようだ。

「クフフフ・・・フハハハハハ!」

体を抱き締め、狂ったように高笑いする。
――ミュゼットは、アリアともまた違う体つきだった。
こうして肉体を移動すると、女性にもさまざまな個体差があることが分かった。
どうやらアリアに比べて華奢なスタイルのようだ。
胸の膨らみも幼女のように緩やかだった。

「んふ・・・っ、しかしこれはこれで中々・・・」

ローブの上からあちこち撫で回しながら、ウットリと息を吐く。
そうしている間に、倒れていたアリアが目を覚ました。
ぎこちない動きで立ち上がり、ノエルの横に並ぶ。
どうやら寄生スライムが再度意識を乗っ取ったらしい。

「ほほう・・・?今しがたまで自分だったものをこうして観察すると言うのも面白いなぁ・・・」

舌なめずりをしながら、神官の姿をじっと観察する。
ボンヤリとどこか遠くを見つめる虚ろな目つきは、隣りにいるノエルとそっくりだ。

「アリア、わたしの声が聞こえるか・・・?」

「はい・・・御主人様マスター

こちらの問いかけに、神官は抑揚のない声で答えた。
近づいて無造作に胸を鷲掴みにする。
アリアは痛みに顔をしかめることもなく、呆然と突っ立っている。
もう片方の手をノエルの股間に忍ばせて割れ目を摩るが、こちらも全く反応を示さなかった。

「フフハハ・・・!素晴らしい・・・実に、素晴らしい!」

人形となった女たちを凌辱しながら、わたしは激しく昂った叫びを上げた。
こんな美女たちがわたしの思い通りになってくれている。
しかも天性の魔術の才能を秘めた肉体さえ手に入れたのだ。
これほどの喜びがあるだろうか?

我慢できなくなり、わたしはアリアの口にむしゃぶりついた。
舌を押し込み、彼女の舌に絡みつかせる。
唾液とともに互いの粘液がまとわりつき、それはただのキス以上の快感を生み出してくれた。

「んぶ・・・っ、じゅるる・・・っ、ちゅぱぁ・・・」

噛みつくように口を攻めたまま、体への愛撫も続ける。
どうやら寄生された女たちは言葉に出して命令しなくても、わたしの思念を感じ取れるようだ。
それが証拠に、アリアはちゃんとこちらの攻めに対応して舌を絡め返してきてくれていた。

横に立つノエルに視線を向けて念じてみると、彼女は何も言わずにわたしに抱き付き、耳を舐めだした。
わたしの興奮に応じて、女たちは進んで自分たちの体を捧げてきたのだ。

二人とも無反応なのが少々物足りないが――
これもスライムの調整を進めれば、宿主本来の記憶を維持したまま主人の命令を順守する人形となるはず。
その過程を観察していくのも、錬金術師としての楽しみである。

「さて――ではそろそろ、20年ぶりの外の世界と言うものを拝ませてもらおうかな・・・?」

一頻り女の肉体を味わって満足したわたしは、唾液で汚れた口を引き剥がした。
すぐに女たちも身を離し、再び居住まいを正す。
わたしは地面に転がっていた杖を手に取って、洞窟の入り口を見上げた。

もはやこのような人里離れた暗い世界に潜む必要などない。
今のわたしならば、堂々と町の中心に魔術の塔を築くことすら造作もないのだ。

見ているがいい・・・
このアッシュ・ズリマワールを虐げてきた者どもに、我が力を示す時がやって来たのだ!

「グブ・・・ッ、そっかぁ〜・・・私たちって、女だけの冒険者だって馬鹿にしてきた連中を見返すためにここにやって来たのよね〜?」

脳からミュゼットの記憶を搾り取り、彼女が抱いていた怒りを感じ取ったわたしは、それを暗い情念に変えてにんまりと残忍な笑みを浮かべた。
口の端から緑色の粘液がツーッと流れ落ちていく。

「ムフフ・・・ならばわたしが代わりに、その愚か者どもにたっぷりと恐怖を与えてやるとしよう・・・さあ、帰るわよ2人とも」

「はい・・・」

「かしこまりました・・・」

闇に囚われた魔女と化したミュゼットの姿で、わたしは仲間たちに命令を下す。
アリアとノエルは生まれたばかりの魔法生物のような危なげな動きで地面に置いてあった荷物を持ち上げ、のろのろと入口への階段を昇り始めた。
その後ろを、ローブの上から体を弄りながら軽やかな足取りでわたしが続く。
一歩一歩階段を上がるたびに、心が浮き上がっていくようだ。

「んふふ・・・グェッ。ぐふふ・・・オゲェッ」

腹の中に満ちるスライムの体も喜びに踊り、そのせいでおくびが口から漏れてしまう。
このような可憐な娘が、体内に怪物を飼っていると知った時の外の連中の恐怖に染まる顔を今から思い浮かべて、下腹部がじわっと熱くなる。

ふと下を見ると、階段に点々と緑色の水滴が生まれていた。
気付かない内に股間から垂れ落ちていたようだ。
愛液と粘液が混ざり合ったものが太ももを伝っていく。

わたしが潜り込んだだけで、すっかりこの娘の肉体も淫乱に変質したようだ。
試しに下半身に力を込めると、割れ目から粘液が滲み出て膣内を愛撫するように蠢いた。

「あ・・・っ、あはぁ・・・ん♪」

いちいち手を動かさずとも、こうして快感を得ることもできるのか。
あれほど敵意と恐怖を抱いていたミュゼットが、実に気持ちよさそうなよがり声を上げているのが愉快でならない。
女でいる限り、この興奮が治まることもなさそうだった。

長い長い階段を昇りきり、二十年ぶりに見る洞窟の入り口に立つ。
外からは懐かしい日の光が差し込んでいた。
まるで太陽が、我が野望への第一歩を祝っているようだ・・・!

二人の奴隷を従え、少女の肉体を手に入れた我――アッシュ・ズリマワールは、こうして闇の世界から光の世界へと帰還したのである。

fin



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